海印寺(ヘインサ) |
電話 |
055-931-1001
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交通 |
大邱西部バスターミナルからバスで「海印寺」下車
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ユネスコの世界遺産に指定されている、『高麗八万大蔵経』があるお寺です。これはお経を版木に刻んだ木版印刷用の板で、八万枚以上にも及ぶ膨大な量が残されています。
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海印寺は典型的な山地型の境内形式を取っており、山門(一柱門)から頂上まで壇と軸に沿ってお堂が建てられています。一柱門から解脱門までは三十三天を意味する33段の階段があり、蔵経板殿のある普眼門までは煩悩を表す108段となっています。このように海印寺境内は、それそのものが仏法の世界とされています。
石段を登り、解脱門をくぐると広い境内に出ます。正面にある九光楼にはインフォメーションがあり、ここでは希望すれば日本語の海印寺紹介ビデオを見せていただくことができます。海印寺の風景や歴史、そして何より八万大蔵経についてとてもわかりやすく構成されていました。
さらにこの九光楼を抜けると前に建つのが本堂にあたる大寂光殿です。堂々とした風格で、中には昆盧遮那仏が奉安されています。内部は極彩色で美しく、仏像も金色です。韓国では日本の仏像が光背を背負うように、背後には絵が描かれることが多いのですが、こちらも多くの仏の絵が描かれ、堂内が仏の世界であることが現されています。
そしてこの大寂光殿の裏に立つのが、ユネスコの世界遺産にも登録されている八万大蔵経を収めた蔵経板殿です。
ここはまさに韓国の英知と信仰の結晶とも言える場所です。何気なく見てしまうと大量の版木があるな程度で終わってしまいますが、そこに秘められた技術や歴史を聞くと、思わず唸ってしまうものがあります。
そもそも八万大蔵経とはその言葉通り、全81258枚に渡るお経が刻まれた版木です。1236〜51年にかけて作られ、その誤字・脱字の少なさや彫られた文字の高い水準で均一された精度は驚嘆に値します。
さらに驚かされるのは保存状態の良さです。750年以上も木製の経板が良好な状態を保ち続けたのにはわけがあります。
一つは彫られた板に施された工夫。それは文字を彫る前に板を海水につけ、陰干しを繰り返して曲がりや蝕みを防止してきました。また漆を塗り、銅版や金具を取り付け、板を補強しています。
そしてもう一つは大蔵経を収めた蔵経板殿の造り。壁の上下や建物の前後に大きさの違う格子窓を取り付け、空気の通りを最大限に良いものにしています。さらに床下には土の中に炭や粘土、砂、塩、石灰などを押し固めて埋めています。これにより湿気が多いときには湿気を吸い、乾燥期には吐き出して湿度を調節する役割を果たさせています。
もう少し版木の文字部分が見られるようになっていればなお嬉しかったのですが、そこまではちょっと贅沢な注文かもしれません。ですがこうした技術の特徴を押さえて見ることができれば、一気に感動が高まる場所でしょう。
その他にももちろん、このお寺は見所たくさんです。九光楼や大寂光殿を始め、多くの建物に丹青や壁画が描かれています。写真では小さくてわかりづらいかもしれませんが、象と蛇に追い立てられて、必死に蔓につかまっている男が描かれています。多分何かの説話をモチーフにしているのだと思いますが、このようなものがそこかしこで見受けられました。
また日が暮れてくると、夜のお勤めが始まります。太鼓を鳴らし、梵鐘を突き、時間を知らせて大寂光殿に人が集まります。実はこのお寺はテンプルステイ(泊まれるお寺)もやっていて、私も宿泊してきました。宿泊者はこのお勤めに出ることになっており、歌うような韓国の読経に聞き惚れてきました。
ちなみに客室はこのような建物の中にあります。相部屋形式で雑魚寝ですが、床暖房があり意外に快適です。食事は修行僧の方と一緒に食べる精進料理です。もちろん、キムチも出ます。おいしかったです。
その他、印象に残ったことはお寺の周りの自然の豊かさです。海印寺一帯は国立公園に指定され、お寺にたどり着くまでも美しい川の流れと並行する道路を通っていきました。そして最後ですが、境内には矢印が描かれた迷路みたいな線が引かれています。これはタットリという線の中を歩いていく儀式? に使われるものだそうです。何となく通るたびに気になってしまう、ちょっとしたポイントでした。
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